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  • Mitsunaga Takaya

背中に刺さったままの、数千本の後ろ指。/ 2010-2019

2010年12月。

当時大学1年、大きめなダンスサークルに所属していた自分はとあるご縁で、ニッチな競技の大会を観戦しにいった。そこで繰り広げられていたのは、全く世に知られていない未知の競技、人間とは思えない技術、お世辞にも頭がいいとはいえないかもしれないが、狭い世界に全てをかけた熱量のぶつかり合いだった。衝撃を受けたと同時に、一番心に残った印象は「もったいない」だった。比較的大きな大学に入り、数百人規模のサークルで大きな舞台が用意され、恵まれた環境にいた自分は、「この文化をもっと沢山の人々に披露したとき、大学は、世の中はどんな反応をするのだろう。このパフォーマー達はその反応を見てどう変わるのだろう。」という考えにとりつかれた。直後、自分はサークルを辞め、誰も知らないマイナージャンルのパフォーマンス団体を作っていた。

2011年春。

新団体の初パフォーマンスは新入生歓迎の校内中庭ステージ、のはずだった。震災の影響でステージがなくなり、代わりに当てがわれたのは地下教室。人通りはない。何百人という古巣サークルのメンバーがシフトで勧誘をする中、8人で声張って土下座して、必死に集めたお客さん150人。その中には、数ヶ月前にはステージに一緒に立っていた仲間達の姿は、一人もいなかった。

練習場所もない。ジャンル認知もない。素人の大学生。死ぬほど馬鹿にされてきた。自分が言われるならまだしも、ついてきてくれる後輩や、命賭けている人間がいるカルチャーの自体が、否定されることが何よりも嫌だった。10年近く経った今でも、ローソン前で馬鹿にしてきた先輩の顔は、忘れない。駅の銀玉の前で、見世物のようにムーブやらせた先輩の顔も忘れない。あなた達が出場すらせず指をくわえて見ていたJuste Deboutで、自分が決勝に残った後に手のひら返したときの顔も忘れない。

それから約10年間。

自分がNBAに出た時もTEDx出た時も、数百の手のひらが返り、また新たに数千本の後ろ指が刺されていく。今更何を言われようとへこたれることはもうないが、最初に刺された冷たい後ろ指は、今も背中に刺さったままで、そのチクチクした感覚は、自分の中にずっと残るのだと思う。

2019年12月。

作った団体は10年目を迎え、Mステやら五輪イベントに呼ばれるようになったらしい。プロデュースしたチームがZIP!でキンプリにレッスンをして、NHKでは30分密着特集されて、スッキリで生放送ににも呼ばれる、そんな世の中になったらしい。そして巡り巡って、全てのきっかけとなった日本一を決める大会には、理事兼主催として携わることに。

今年は準備の年でした。進め方もベストだったかはわかりないし、色々な方に迷惑もかけたかもしれませんが、とにかく1年泥をすすってました。ようやく来年、この年明けからいくつか発表があります。今年は人付き合いも悪く、黙々と引きこもり、何を考えてるのかわからないと例年以上に指摘された一年でした。ただ、不思議なことにスタンスは10年変わっていません。それも、最初から刺さったままの後ろ指のおかげかもしれません。不器用で素敵な才能達を、世界に解き放ちたい。そのためには表方も裏方も、広告もストリートもやる。全部やった人間しか繋げられない世界があると信じて。そのために、今まで蓄えたものを、仲間達と一緒に惜しみなく注ぎ込みます。自分達だけでは作り上げるようなものではないし、作り手も参加者もお客さんも最高だったと思える空間が、結果として、そこに存在していたら良いなと思ってます。大好きな人達にとって、来年も素敵な年になりますよう。


満永 隆哉 / Takaya Mitsunaga a.k.a. mic™️
Cultural Architect, Director, Artist.

1991年生まれ、千葉県出身。12歳の時に訪れた海浜幕張駅前のストリートバスケットボールコートにて、音楽やパフォーマンスカルチャーと出会い影響を受ける。大学進学後に休学、国内外でのパフォーマー生活を経て2015年に総合広告代理店に入社。平日はクリエイティブ職として制作業務に従事しグローバルクライアントのコピーライティング・PR・プロモーションを担当する傍ら、金曜深夜から休日はパフォーミングアーティスト兼演出家として活動する5年の二重生活の後、HYTEK Inc.を創業。​​メディアアート・コピーライティング・イノベーションなど様々な領域のアワードを受賞し、アメリカNBA公式戦、TEDx、TV等、様々なイベント・メディアにも出演。表舞台と裏方と、マスとストリートとを全て繋ぎ合わせ、日本の才能が活躍できる未来を作ることを目標に掲げる。

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